
2020年12月2日発売。前作『重力と呼吸』から2年2ヶ月ぶりとなる本作は、全10曲、総演奏時間45分14秒という、極めてタイトな構成でまとめられている。
『重力と呼吸』は約48分だったので、それよりも短い。
本作はバンド史上初となる全編海外でのアナログレコーディングを敢行するなど、野心溢れる一作という印象を受けた。また全体的に「死」や「老い」を意識した曲がほとんどを占めている。前作にも老いを意識したような曲はあったが、今回は比較にならないほど「老い」を感じる。これは桜井自身が意図したものである。そんなわけで本作はどちらかというと若い世代よりも、ミスチルと同じ50代以降の人には非常に刺さるアルバムなのだと思う。
この記事の概要
- 『SOUNDTRACKS』のみんなの評価は?
- 『SOUNDTRACKS』とは一体どういうアルバムなのか?
- 『SOUNDTRACKS』の全収録曲レビュー一覧
ミスチル/20thアルバム『SOUNDTRACKS』
ミスチル/20thアルバム『SOUNDTRACKS』のみんなの評価は?




あっという間だったのかもしれないけど物足りなさを感じてしました。
今回のリード曲と思われる「Brand new planet」はとても壮大ですが
エソラや擬態の様な勢いある曲とはちょっと違うかなと。。。
個人の好みになってしまいますが全体的に穏やかな曲が多かったので
勢いある曲やREM、フェイクの様なブラックな曲も欲してしまいました。
それでも、もっともっと聴きますけどね。

前作も地味で批判が多かったようだが、秋くらいに聴くと割と耳馴染みがよくてなんだかんだ好きなアルバムだった。
今作も嫌いではないが、従来のミスチルの延長線上にしかないと思う。やはり『REFLECTION』での脱却の後ではインパクトが弱いのか。
曲の並びもdocumentary filmの次にberthdayは合わない。
明確に死をイメージしたと公言していますが、同じく死を表現した宇多田ヒカルの傑作fantomeと比べたらかなり見劣りします。
ひとこと
前作『重力と呼吸』が好きな人なら、本作も好きになる気がする。
ミスチル/20thアルバム『SOUNDTRACKS』の特色
本作を語る上で確実に外せないのが「音響」「作品テーマ」である。この2つを中心に記事を進めたいと思う。
【音響】初の全編海外レコーディング・久々のアナログレコーディング
本作『SOUNDTRACKS』のサウンドを一言で表すなら、「デジタルの過刺激に疲れ果てた大人に贈る、極上の音響的セラピー」だ。
前作『重力と呼吸』において、彼らは「俺たちはまだ現役のロックバンドだ」と誇示するかのように、ゴツゴツとした荒々しいバンドサウンドを鳴らした。
これは強烈なエゴイズムであり、若手バンドへの牽制でもあった。
しかし今作では、その闘争心や強迫観念から完全に解放されている。彼らが向かったのは、ロンドンの「RAK Studios」をはじめとする世界的名盤の聖地。
そこで彼らは、現代の主流である無制限のデジタル録音(DAW)を放棄し、あえてアナログレコーディングという極めてストイックな制約を自らに課したのである。
パソコンの画面上で何度でもやり直し、ミリ秒単位で修正できるデジタルの甘えは一切通用しない。
録音する音の取捨選択を、現場の空気の中で即座に決定しなければならないという、ヒリヒリするような環境だ。
その結果何が生まれたか。音数が極限まで削ぎ落とされたことによる、圧倒的な「余白」である。
グラミー賞エンジニア、スティーヴ・フィッツモーリスによるミックスは、現代のJ-POPにはびこる「音圧競争(ラウドネス・ウォー)」とは無縁。桜井のボーカルの微細な息遣い、アコースティックギターの弦の擦過音、ドラムのふくよかな残響。それらが一切干渉し合うことなく、極めて立体的に耳元で鳴る。
さらに、サイモン・ヘイルによる流麗なストリングスは、J-POP特有の「曲を派手にするための安易な装飾」ではなく、もはやバンドのアンサンブルと完全に溶け合っている。
彼らは「Mr.Childrenらしさ」という殻を軽やかに破り捨て、自分たちの演奏すらも楽曲の美しさを引き立てるための一要素へと後退させた。この音響的快楽は、酸いも甘いも噛み分けた大人にしか味わえない、最高級の贅沢なのである。
【作品テーマ】50代を迎えたミスチルが向きあう「老い」と「死」
ポップカルチャーにおいて「若さ」は絶対的な正義である。長寿バンドの多くは、かつての若々しいパブリックイメージを維持するために、無理をして青春の続きを歌おうとする。
しかし、50代を迎えたMr.Childrenは、そんな幻想を自らの手で打ち壊した。本作の制作にあたり、桜井和寿は「これが最後のアルバムになってもいい」という究極の覚悟を口にしている。彼らは「老い」と「人生の有限性(死)」という不可避の残酷な運命から一切目を背けることなく、それをしっかりと作品と昇華させたのだ。
King Gnuの常田大希が主宰する「PERIMETRON」が手掛けたアートワークが、それを如実に物語っている。幾重にも傷が入り、ひび割れた、古びた卒業アルバムのようなジャケット。それは「輝かしい過去の記憶の風化」と、「抗うことのできない時間の残酷さ」の象徴である。
そして何より、彼らがこの記念すべき20枚目のアルバムに『SOUNDTRACKS』という、一見すると没個性的なタイトルを冠した意味を考えてほしい。
「サウンドトラック(劇伴)」とは、主役の背景で鳴る音楽のことだ。人々の心の叫びを代弁する「圧倒的な主役」だった彼らが、ついに「この音楽の主役は俺たちじゃない。あなたたちの人生の背景(BGM)になるよ」という、主役からの降板宣言をしたのだ!
「音楽で世界を変える」といった若き日の自意識を完全に手放し、老いていく日常の残酷さと美しさをただ静かに肯定する。
無理に背中を押すような応援歌はここにはない。魔法も奇跡も起きない泥臭い日常を讃える(The song of praise)、成熟した大人のためのドキュメンタリーが記録されているだけだ。
ひとこと
強烈なエゴを手放し、「誰かの人生の背景音楽」に徹するという諦念こそが、このアルバムに途方もない普遍性を与えている
いつまでも若々しいバンドでいてほしいと願うリスナーにとって、この「老い」をテーマにした本作は踏み絵であると思う。しかし、共に年を重ね、しがらみの中で生きる我々にとって、これほど優しく、そして生々しく伴走してくれるアルバムは他にない。
ミスチル/20thアルバム『SOUNDTRACKS』の全収録曲レビュー一覧
クリックすると各曲のレビュー記事へととびます。
1.DANCING SHOES
2.Brand new planet
3.turn over?(配信限定シングル第8弾)
4.君と重ねたモノローグ(38thシングル)
5.losstime
6.Documentary film
7.Birthday(38thシングル)
8.others
9.The song of praise
10.memories
まとめ
記念すべき20枚目のオリジナルアルバムにして、Mr.Childrenが「国民的ロックバンド」という重圧と幻想を完全に手放した意欲作『SOUNDTRACKS』。
本作は、リスナーを選ぶ「踏み絵」のようなアルバムなのは間違いない。
そういった意味では『深海』をかなり彷彿とさせる。
※『深海』も海外レコーディング・アナログレコーディングをしているので似ている作品だ。
ディストーションギターが唸るロックサウンドや、無理やりにでも前を向かせるような熱いメッセージを求めるならば、
このアルバムは「退屈」で「おとなしすぎる」作品に映るだろう。
しかし、それは彼らが「老いていく現在の自分たちにしか鳴らせない音楽」を最優先した結果である。
スティーヴ・フィッツモーリスが手掛けたミックスによるアナログの温もりと、サイモン・ヘイルの流麗なストリングス。そして「世界を変える主役」であることを辞め、あなたの人生の「背景(サウンドトラック)」になることを静かに誓った桜井和寿の諦念。
日々の理不尽な仕事や、SNSのデジタルなノイズに疲れ果てた夜。部屋を少し暗くして、お酒でも飲みながらこのアルバムを通しで聴いてみてほしい。
彼らはもう「頑張れ」とは言わない。ただ、傷だらけで不格好なあなたの日常のすぐ隣に座り、その泥臭い人生を静かに讃えてくれるはずだ。
全10曲、45分14秒。
魔法も奇跡も起きない大人たちのためのサウンドトラックを、ぜひその耳で体感してほしい。
ひとこと
本作は、アナログ録音のため、ミスチル初のレコードが発売されている。レコードで聴くとこれまた良いので、ぜひ!









