竹内まりやが1984年に発表した楽曲「プラスティック・ラブ」。本作が34年の時を超え、2018年、海外で爆発的に流行した。本記事では、「プラスティック・ラブ」が海外で流行した理由を解説する。
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海外で流行ってる「プラスティック・ラブ」、まずは基本情報から!
出典:https://www.amazon.co.jp
1984年4月25日に発売した竹内まりやの6thアルバム『VARIETY』収録曲。
翌年の1985年に"Extended Club Mix"としてシングルカットされた(12thシングル)。
1982年に山下達郎と結婚し、音楽活動を休止していた竹内まりや。
6thアルバム『VARIETY』は、竹内まりや復帰後初のアルバムだった。
これまでのアルバムは、様々な作家が曲を提供していたが、本作では全曲作詞作曲・竹内まりや(編曲・山下達郎)。
つまり、本作から竹内まりやは本格的に作家として活動していくことになる。
メモ
6thアルバム以前(つまり音楽活動休止前)の竹内まりやは、ルックスの良さも相まって、アイドル的な存在だったらしい。そのため、楽曲に関しても、自身で作詞作曲することはなく、ほとんど提供曲を歌うのみであった。しかし、作詞作曲したいという想いが積もり、次第に竹内まりや自作曲の割合が増えていく。
なぜ、本作から全曲作詞作曲を竹内まりやがするようになったのか。
この理由が、まさに本記事で扱う「プラスティック・ラブ」と関係しているので、紹介する。
「プラスティック・ラブ」の完成度の高さにより、アルバム制作体制が変わった!?
1981年より音楽活動を休止していた竹内まりやは、作詞家・作曲家などの裏方として活動していくことになる。
この時期に当時の人気アイドル・河合奈保子のヒット曲「けんかをやめて」「Invitation」を提供している。
そして、1982年、夫の山下達郎がアルファ・ムーン株式会社へ移籍したため、竹内まりやも移籍。
この移籍を期に、休止中だった竹内まりやの次回作(復帰作)制作が開始されたのだ。
当初の予定だと、従来どおり山下達郎プロデュースで、作家からの提供曲と竹内まりや自作曲を混ぜたアルバムにする予定だった。
そして、なんと、シングル曲を桑田佳祐に依頼する予定でもあった。
しかし
竹内まりやが休止中に書き溜めていた曲を山下達郎に聴かせたところ、あまりの完成度の高さに驚き、急遽全曲作詞作曲・竹内まりやで構成することになったのだ。
特に、山下達郎が過去最高の出来と評したのが、まさに、「プラスティック・ラブ」。
つまり「プラスティック・ラブ」の完成度の高さは、アルバム制作体制を変えてしまうほどだったのである。
結局、6thアルバム『VARIETY』は30万枚以上を売上げ、当時としては竹内まりや史上最大のヒット作となった。
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「プラスティック・ラブ」が海外で流行った理由とは?
「プラスティック・ラブ」は、収録アルバム発売の翌年に、シングルカットされる。
その際の売上は、約1万枚程度。
完成度の高い曲ではあったが、世間から注目が集まることはなかった。
実際、「プラスティック・ラブ」は竹内まりや楽曲における配信ランキングやカラオケランキンだと、トップ10にも入らない。代表曲というには程遠い曲だった。
そして、時が流れ、2018年、、、
突如として「プラスティック・ラブ」が海外で爆発的に流行する。
次の画像を見てほしい。
これはTHE JAPAN TIMESによる、2018年邦楽シーンの総括の一部。
この中に「プラスティック・ラブ」が触れられている。
Mariya Takeuchi’s 1984 song “Plastic Love” ended up being the biggest Japanese hit in the West
(日本語訳)竹内まりやの1984年楽曲「プラスティック・ラブ」は、結果的に、西部における邦楽最大のヒットになった
なぜ、34年も前の楽曲が、今になって海外で流行っているのだろうか…。
YouTubeが「プラスティック・ラブ」を海外で流行らせた!!
「プラスティック・ラブ」が海外で流行った大きな要因は
YouTube
である。
とある海外ユーザーが違法にアップロードした「プラスティック・ラブ」が、なんと再生回数2,000万以上を記録したのだ。
この動画は、一度削除されたが、復活している。権利申請したのかな?
しかも、コメント欄はほとんど英語。
これほど再生された一つの要因は、YouTube上のおすすめアルゴリズムだと言われている。
YouTubeを利用していると、よく同じ"関連動画"が表示されることがある。
「プラスティック・ラブ」の動画はこのおすすめアルゴリズムに引っかかったと言われている。
どのような基準で、動画がこのアルゴリズムに引っかかるのかは分かっていない。
つまり、現代的な方法で「プラスティック・ラブ」は多くの人々の耳にとまり、その完成度の高さから、人気が爆発したのだ。
ちなみに、この動画には6thシングル「Sweetest Music」のジャケット写真が使用されている。
「プラスティック・ラブ」のジャケット写真だと勘違いしてしまう人がいるので、誤解の無いように。
ただ、個人的にはこの「Sweetest Music」の"竹内まりやの美しさ"も、ヒットした要因の一つのような気がする(笑)。
「プラスティック・ラブ」を海外で流行らせる下地をつくった"シティ・ポップブーム"
とはいえ、「プラスティック・ラブ」が拍子もなく流行ったわけではない。
実は、YouTubeで「プラスティック・ラブ」が爆発的に流行る前、海外では"あるブーム"が起こっていた。
それが、
シティ・ポップブーム
だ。
シティ・ポップとは?
1970年代後期から1980年代に流行した、都会的なイメージを前面に出したポップス
近年、海外の一部の音楽ファンの間で、70~80年代の邦楽(とりわけシティ・ポップ)が注目されているという。
きっかけは、インターネット上で広まった「Vaporwave(ヴェイパーウェイヴ)」や「フューチャー・ファンク」と呼ばれるジャンルが流行したこと。
これらのジャンルは、簡単に説明すると、過去の楽曲をサンプリングし加工した音楽のこと。
シティ・ポップの数多くが、サンプリング元として、「Vaporwave(ヴェイパーウェイヴ)」や「フューチャー・ファンク」の発展に貢献してきたのだ。
海外の音楽ファンの注目は、サンプリング元として使用されていたシティ・ポップに集まっていたのだ。
そんな中で、「プラスティック・ラブ」がYouTubeに違法アップロードされる。
つまり、
- 「Vaporwave(ヴェイパーウェイヴ)」や「フューチャー・ファンク」というジャンルが流行
- サンプリング元になっていたシティ・ポップの人気が沸騰
- 人気沸騰中に「プラスティック・ラブ」が違法アップロード
- さらに、動画がYouTube上のアルゴリズムに引っかかり、多くの人々の関連動画に表示
という流れの中で、「プラスティック・ラブ」は発掘され爆発的に流行したのだ。
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最後に
34年の時を超え、スポットライトを浴びることができたのは、インターネットが普及していたからだ。
改めて、インターネットって素晴らしい、と思えた。
「プラスティック・ラブ」は前述の通り、竹内まりやの代表曲というほどではなかった。
そのため、世間的には認知度は低かった。
でも、インターネットが普及し、手軽に音楽に触れることができるようになったこの時代に、日本を飛び越え海外で人気を呼んだ。
そして、海外の人気を受けて、2019年には「プラスティック・ラブ」のMVが制作された。
逆輸入のようなかたちで、日本でも話題を呼んだ。
たとえ今は人気がでなくても、いつか評価されるときが来る。
クリエイターにとって、この「プラスティック・ラブ」現象は、とてつもなく勇気をくれる事象のはずだ。
最後までご覧いただきありがとうございました。