19thアルバム『重力と呼吸』のエンディングナンバー。6分8秒と、アルバムの中では演奏時間が最も長い1曲。元々は未発表曲としてドコモのCMで使用されていた。この曲は何と言っても内容が素晴らしい。桜井の悩みや不安がせきららに描かれているため、聴き手の胸に突き刺さる。また、ミスチルの今後を考えさせられる曲でもあるため、非常に重要な1曲だ。
この記事の概要
- 「皮膚呼吸」のみんなの評価は?
- 「皮膚呼吸」とは一体どういう曲なのか?
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ミスチル/19thアルバム『重力と呼吸』の収録曲「皮膚呼吸」
そもそも「皮膚呼吸」って?
Mr.Childrenが2018年10月3日に発売した19thアルバム『重力と呼吸』の収録曲であり、エンディングナンバー。
「Your Song」と並ぶ、重要曲。
>>>『重力と呼吸』の1曲目に相応しい良曲「Your Song」~歌詞の意味とは?【歌詞解釈】
「Your Song」がファンに向けた内容だったのに対し、「皮膚呼吸」は自分自身に向けた内容になっている。
歌詞を見ればわかるように、50歳を目前にした桜井の悩みや不安が描かれている。
そのため、この曲を聴くと結構苦しくなる。
「これからミスチルはどうなっていくのか」
この曲を聴くと、ぶしつけながら、そんなことを考えてしまう。
もう30年近く活動を続けているミスチル。
ミスチルに憧れ、影響され、音楽を志した人々は数知れない。
そして今現在、はっきり言ってしまえば、ミスチル以上に人気を博す若手アーティストは少なからず存在する。
つまり、ミスチルはもはや"一世代も二世代も前のアーティスト"と捉えられてもおかしくない。
この先、ミスチルは古いと言われ、過去のアーティストになってしまうのだろうか。
はたまた、今まで以上に第一線で活躍するアーティストになることができるのか。
これはミスチルの今後の活躍に期待するしかない。
そんな中で、桜井自身「このままの活動でいいのか?」という不安は尽きないはず。
冒頭に登場する"「それで満足ですか?」"という歌詞が象徴するように、Mr.Childrenという十分すぎるネームバリューに頼ってはいけないことは自覚しているはず。
ただ、多くのファンにとってみれば、ミスチルはミスチルらしい曲を作ってくれればいい。
桜井にとって、そんなファンの想いは時に『重力』となって苦しめているのかも知れない。
「皮膚呼吸」という曲は、せきらら過ぎるくらい、桜井の葛藤が伝わってくる。
そんな曲を初の完全セルフプロデュースアルバムのエンディングに配置したことは、きっと「これからのMr.Childrenは、"ミスチルらしさ"から完全脱却する」という意思表示なのだと私は思う。
「皮膚呼吸」は未発表曲としてドコモのCMで使用されていた!
出典:https://iphone-mania.jp
元々は、2017年にNTTドコモ25周年キャンペーンのCMで、未発表曲として公開されていた。
そのCMで使われていた箇所がこちら。
離れた場所から 何が見える(言える?)だろう
これはBメロの箇所。
ただし、この歌詞はボツになっている。
また、メロディーも完成版よりも、どこかポップになっている。
そのため、私がこのCMを見て、未発表曲としての「皮膚呼吸」を聴いたときは、まさかこんなにもせきららに不安や悩みを描いた曲になるとは思わなかった。
ひとこと
「皮膚呼吸」は、"ミスチルらしさを求めるファン"へのはなむけの言葉なのかもしれない
「皮膚呼吸」のみんなの評価は?
ひとこと
やはりこの曲は評価が高い
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ここからは管理人の「皮膚呼吸」独自解釈!
【皮膚呼吸/歌詞解釈①】50歳を目前にした桜井の弱音
まずは冒頭の歌詞を引用したので見てほしい。
と、ある日
こめかみの奥から声がして
「それで満足ですか?」って
訪ねてきた
この歌詞は、非常に輝かしい実績を持った者ではないと書けない歌詞だと思う。
まさに、90年代から第一線で活躍し、ミリオンヒットを連発してきたミスチルだからこその歌詞。
ミスチルはもう誰の目からしても「もう十分でしょ」と思われてしまうほど、過去の実績が凄まじすぎる。
でも、桜井自身はやはり"現状に満足はしていない"のだろう。
つまり、「それで満足ですか?」という問いかけは桜井が自分自身に向けたもの。
でも、自分を満足させるためには、何をするべきなのだろう。
直後の歌詞を引用したので見てほしい。
冗談だろう!?
もう試さないでよ
自分探しに夢中でいられるような
子供じゃない
"老い"は誰にでも迫ってくる。
この歌詞は、50歳を目前にした桜井が感じる"老い"というものをせきららに表している。
先ほど引用した歌詞の"「それで満足ですか?」"に対する答えが、"もう試さないでよ"。
なんて正直なのだろうか。
凡庸な歌ならば、"もう試さないでよ"という圧倒的な弱音を描かない。
2番のAメロ歌詞を引用したので見てほしい。
高架下は怒鳴り声にも似た音がして
時間が猛スピードで僕を追い越していった
この歌詞も、"老い"を表している。
あっという間に時間が流れてゆき、子供だった自分は大人になってしまった。
もう、無茶できる歳ではない。
でも、こめかみの奥で「それで満足ですか?」と、もう一人の自分が問いかける。
ひとこと
"もう子供じゃない"桜井の正直な想いが伝わる
【皮膚呼吸/歌詞解釈②】なぜ「深呼吸」ではなく「皮膚呼吸」なのか?
「皮膚呼吸」とは、その名のとおり、皮膚を利用した呼吸のこと。
人間も皮膚呼吸をする。
しかし、人間の皮膚呼吸は、肺呼吸で取り込む酸素と比べてわずか0.6%しかない。
皮膚呼吸で取り込める酸素は0.6%
なぜ、こんな話をするかというと「ヒトは皮膚呼吸していて、それがとても重要だ」という誤解が、世の中に今なお残っているからです。
ヒトも皮膚から酸素を 取り入れることは可能です。しかしその量は、肺呼吸で取り入れる酸素の量と比べて、わずか0.6%に過ぎません。
つまり、人の皮膚呼吸は皮膚のごく表面の細胞に酸素を供給するだけです。
もちろん通常の肺呼吸をしていれば、これらの細胞にも酸素は届きます。
もし、皮膚呼吸が活発なら、ヒトは息をしなくてもカ エルのように生きていられるはずです。にもかかわらず、「皮膚呼吸をしないとヒトは病気になる」「皮膚呼吸を促進して健康になろう」とか根拠のないことが、まことしやかに流れ、一部は商売に利用されているようです。
つまり、人間にとって皮膚呼吸は重要ではない。
にもかかわらず、なぜ桜井はこの曲を「皮膚呼吸」と命名したのだろう。
歌詞には、"深呼吸"も登場するので、「深呼吸」というタイトルでもいいのでは?と思ってしまう。
次の2つの引用した歌詞を見てほしい。
深呼吸して 空を見上げて 風に吹かれて
いつからか 砂に埋めた感情を
まだ生乾きの後悔を噛みしめる
皮膚呼吸して 無我夢中で体中に取り入れた
微かな酸素が 今の僕を作ってる そう信じたい
"深呼吸"および"皮膚呼吸"は、曲中でそれぞれ一回しか登場しない。
"深呼吸"における歌詞を見てみると、"砂に埋めた感情"や"後悔"といったネガティブな言葉が並べられており、どこか負のオーラを感じる。
一方、"皮膚呼吸"における歌詞は、比較的ポジティブな内容になっている。
メモ
大サビでは"微かな酸素"が"微かな勇気"になっている。このことからも、"皮膚呼吸"における歌詞がポジティブな雰囲気をまとっていることが分かる。
"深呼吸"とは、人間にとって生きるために必要なこと。
そして、"皮膚呼吸"は、人間にとっては必要の無いこと。
つまり、曲中における"深呼吸"とは「生きるために必要不可欠なこと」を表しているのだと思う。
生きるために必要不可欠なこと、これは寝ることだったり食べることだったり、お金を稼ぐこと。
"深呼吸"における歌詞が負のオーラを感じる理由は、生きることがツラいと思うほど悩んでいるから。
そして、"皮膚呼吸"とは「生きるために必要不可欠ではないこと」、そう、"娯楽"である。
桜井にとっての一番の娯楽、、、それはもちろん"音楽"。
"皮膚呼吸"における歌詞にポジティブさを感じる理由は、たとえ意味のないことだとしても、「音楽を聴くこと」が人生を豊かにするのだと桜井は信じているから。
これまで無我夢中で体中に取り入れてきた数多くの音楽が、今の自分をつくっている。
音楽家である桜井だったら、きっと音楽の持つパワーを信じていたいし、ミスチルの楽曲が誰かの人生を助けていると信じていたいはず。
だからこそ、人間が生きる上で必要の無い「音楽を聴くこと」を、"皮膚呼吸"と例え、この曲に命名したのだと思う。
Cメロの歌詞を引用したので見てほしい。
出力が小さな ただただ古いだけのギターの
その音こそ 歪むことに僕の淡く蒼い願い
サスティンは不十分で今にも消えそうであっても
僕にしか出せない特別な音がある
きっと きっと
サスティンとは、楽器を弾いた後に減衰音が持続していること。
桜井は、自分が奏でる音楽に願いを込めている。
その願いとは前述のとおり、"ミスチルの楽曲が誰かの人生を助けている"。
ひとこと
ミスチルにしか出せない特別な音、きっとあるはず!
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まとめ
最後の歌詞を引用したので見てほしい。
苦しみに息が詰まったときも
また姿 変えながら
そう今日も
自分を試すとき
1番のAメロでは、"もう試さないでよ"と弱音を吐いていた。
しかし、どんなに老いていこうとも、自分にしか出せない特別な音があると信じ、試し続けることを決めたのだ。
こんな素晴らしい曲が、エンディングナンバーだと、気持ち良くアルバムを聴き終えることが出来る。
それと同時に、「この先桜井はどんなことを試していくのか?」という期待が膨らむ。
今までのファンには受けないような音楽を発表するかもしれない。
それでも、ミスチルのファンであり続けたい、そう思えるくらい「皮膚呼吸」は素晴らしい1曲だ。
ひとこと
絶対に聴くべき名曲
「皮膚呼吸」の評価
5点満点中5点
内容も曲調もミスチル史に大きく名を残す大傑作