SMAPが初のミリオンセラーを獲得した名曲「夜空ノムコウ」。本記事では、そんな多くの人の胸を打つ「夜空ノムコウ」の歌詞の意味について解説する。また、「夜空ノムコウ」制作背景を知るとさらに興味が出ると思うので、そちらのほうも詳しく解説する。本記事を読んで、「夜空ノムコウ」をより好きになってもらえると嬉しい。
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そもそもSMAPの「夜空ノムコウ」とは?
出典:https://www.amazon.co.jp
1998年1月14日に発売したSMAP27枚目のシングル。
実は、「夜空ノムコウ」は1997年7月にはすでに完成していた。
しかし、25枚目のシングル「セロリ」がミディアムテンポであり、2作続けてミディアム調だとダメだろうということで、発売を見送られていたのだ。
結局、「セロリ」の次シングルは「Peace!」というアップテンポな作品になった。ちなみに、「Peace!」は30万枚という、当時のSMAPとしては異様に低い売上を記録してしまった。
そして、完成から約半年後、いよいよ「夜空ノムコウ」発売となるのだが、発表の仕方が他シングルとは明らかに違い、もうすで名曲の風格を漂わせていた。
『SMAP×SMAP』で1997年年末から、1パートづつ発表していったのだ。
つまり、今週はサビと間奏の裏声だけ、という感じで小出しに発表されていった。
このような発表の仕方は今までになかった。
そして、『SMAP×SMAP』の1997⇒1998カウントダウンスペシャルの最後に「夜空ノムコウ」を披露。
もはや
1998年は「夜空ノムコウ」の年だ!!
と言わんばかりの待遇だった(笑)。
いざ1月14日に発売されるやいなや、初動で45万枚越えを記録。
前作「Peace!」の累計売上を初動だけであっさり越えてしまった。
結果的に、たったの3週間でミリオン達成し、累計売上160万枚という大台を記録。
SMAP初のミリオンセラーとなった。
オリコン年間チャートでは2位、カウントダウンTVの年間チャートでは1位。
SMAPの全シングルでは「世界に一つだけの花」に次ぐ2位の売上を誇っている。
1998年末、紅白歌合戦でSMAPは「夜空ノムコウ」を披露した。
「夜空ノムコウ」で始まり「夜空ノムコウ」で終わった1998年だったのだ。
SMAP「夜空ノムコウ」の製作背景
「夜空ノムコウ」は、とりわけ制作背景の逸話が多く残っている。
「夜空ノムコウ」の歌詞の意味を知る前に、まずは制作背景の逸話を知って欲しい!
制作背景を知る事で、「夜空ノムコウ」の魅力はより増すだろう。
「夜空ノムコウ」の作詞を担当:スガシカオの制作背景
「夜空ノムコウ」の作詞を担当したのは、歌手のスガシカオ。
スガシカオは1997年2月26日にメジャーしているため、「夜空ノムコウ」はデビュー後間もないときに作詞している。
メモ
スガシカオは、1997年8月6日発売の10thアルバム『SMAP 011 ス』収録曲「ココ二イルコト」の作詞・作曲・編曲も担当している。さらに、「夜空ノムコウ」のカップリング曲「リンゴジュース」の作詞作曲も担当。前述の通り「夜空ノムコウ」は1997年7月には完成していたので、スガシカオは「ココ二イルコト」と「夜空ノムコウ」を同時期に担当していたと考えられる(「リンゴジュース」は不明)。これらSMAPと関わった作品全て、曲名にカタカナを使用しているのが興味深い。
「夜空ノムコウ」の作詞に関してスガシカオは、締め切り当日まで忘れてしまっていたという逸話はかなり有名。
羽田空港のロビーでスタッフに指摘され、慌てて飛行機内で歌詞の構想を練った。
そして当日のライブ会場の控え室で、僅か20分程度で歌詞を描き上げたという。
タイトルは「夜空"のむこう"」で、「曲によっては言葉を修正するかもしれません」というメモを添えてファックスで送った。
結局、修正したのはタイトルの"のむこう"を"ノムコウ"と、カタカナにしただけだった。
"ノムコウ"とカタカナにしようと提案したのは、当時のSMAP製作スタッフ。
音楽評論家・小貫 信昭曰く、"のむこう"をカタカナにする効果として次のように語っている。
流暢には読み辛いから、受取った方は噛みしめて読むのである。ノ、ム、コ、ウ…。するとどうだろう…。すーっと頭の中を通り過ぎず、噛みしめるからこそ様々なイメージが想起される。
歌詞の内容に関しては、スガシカオが浪人生だった頃に付き合っていた彼女と、御茶ノ水の公園で過去や未来など様々な話をしていたことがモデルになっている。
「夜空ノムコウ」の作曲を担当:川村結花の制作背景
「夜空ノムコウ」の作詞を担当したのは、歌手の川村結花。
川村結花はもともと、1994年2月2日発売の5thアルバム『SMAP 005』収録曲「ギョーカイ地獄いちどはおいで」の作詞・作曲を担当している。
つまり、「夜空ノムコウ」は実に3年ぶりのSMAP×川村結花作品だった。
川村結花は、過去に京王線の沿線に住んでおり、近くの喫茶店でよく彼氏と将来のことを語り合っていたらしい。
あるとき、久々にその喫茶店に行ってみると、再開発によって周囲の建物がすべて取り壊され、更地になっていた。
この瞬間、川村結花は思い出を壊されたというショックを受けたという。
しかし、そのショックが「夜空ノムコウ」のあの胸を打つメロディーに繋がった。
オリコン 98年9月14日号にて、川村結花は次のように語っている。
今まで歩いてきた青春の扉がガッシャーン!って閉まって、気持ちがウワァーって動いた時に降りてきた。
青春時代の思い出でもあった場所が取り壊されていたことによって、ある種の"青春の終わり"を感じたのだろう。
そして、その"青春の終わり"を「夜空ノムコウ」のメロディーに反映させたのだ。
作詞のスガシカオ、作曲の川村結花の制作背景を見てみると、ある共通点に気がつく。
それは、どちらも若い頃に恋人と将来を語り合った時間を元に製作しているということだ。
- スガシカオ・・・浪人時代の彼女と公園で過去や未来を語り合った
- 川村結花・・・彼氏と喫茶店で未来を語り合った
2人のこの制作背景における共通点が、奇跡的にはまったことが、万人の心を打つ名曲になった要因の一つだろう。
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SMAP「夜空ノムコウ」の歌詞の意味とは?
【夜空ノムコウ/歌詞の意味①】真夜中の公園で彼女と語り合った"あのころ"
歌詞は前述の通り、スガシカオの浪人時代の彼女との公園での会話が元になっている。
1番の冒頭の歌詞を引用したので見てほしい。
誰かの声に気付き ぼくらは身をひそめた
公園のフェンス越しに夜の風が吹いた
"誰かの声に気づき~"の箇所。
誰かの声で身をひそめたということは、誰もいるはずがないと思っていたということだ。
誰もいるはずがない.......となると、"真夜中"だと推測できる。
そして、"公園のフェンス~"の箇所で、主人公たちが公園にいることが分かる。
スガシカオの体験談を含めると、真夜中の公園で主人公と彼女は未来について語り合っている、ということだ。
しかし、これらのエピソードは、遠い過去だったと分かる。
サビの歌詞を引用したので見てほしい。
あれからぼくたちは何かを信じてこれたかなぁ
あのころの未来にぼくらは立っているのかなぁ
これらサビの歌詞における"あれ"と"あのころ"というのは、まさに1番の歌詞で描かれた"真夜中の公園で未来を語り合ったとき"。
スガシカオの体験談によると、浪人生だった頃の話なので、まだ社会に出ていない頃のころのこと。
でも、青春が終わり、社会に出た今、なかなか上手くはいかない。
過去にとらわれ、現実に打ちのめされていることが、語尾の"かなぁ"でなんとなく推測できる。
【夜空ノムコウ/歌詞の意味②】夜空(あのころ)が明け、明日(未来)が待っている
若かったあの頃は、自分は何でも出来ると思っていた。
2番のAメロ歌詞を引用したので見てほしい。
歩き出すことさえも いちいちためらうくせに
つまらない常識など つぶせると思ってた
"歩き出すこと"、これは"当たり前のこと"と捉えていいだろう。
そんな当たり前のことさえも面倒くさがるくせに、自分には常識を越える力があると思い込んでいる。
若気の至りだ。
そんな若気の至りも、遠い過去のこと。
大人になった今、いかに社会が厳しいかを身に染みて感じている。
最後の歌詞を引用したので見てほしい。
夜空のむこうには もう明日が待っている
ここでの"夜空"とは、もちろん現在の主人公が見ている空でもあるが、1番で描写された"真夜中の公園で彼女と語り合ったあのころ"の空でもある。
青春時代、彼女と語り合ったあのときの夜空、そのむこうには"明日"が待っている。
つまり、
青春の終わりを"夜空(あのころ)が明け、明日(未来)が待っている"
と例えているのだ。
まさに作曲した川村結花が語っていた、"青春の扉がガッシャーン!って閉まって"、という表現が当てはまっていると思う。
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まとめ
「夜空ノムコウ」が、万人の心に響く名曲になった理由の一つは、普遍性があることだと思う。
作詞のスガシカオも作曲の川村結花も、恋人と過ごしたときを元にして作詞作曲したため、下手したら"昔の恋人との日々を思い出すだけの恋愛ソング"になっていた可能性もある。
しかし、スガシカオは、そういう路線ではなく"若者特有の未来への不安"に焦点を当てた。
そして、川村結花は、思い出が壊された(彼氏とよく行った場所が更地になっていた)という自身の経験に焦点を当てて、胸を締め付けるような切ないメロディーにした。
2人の焦点の当て方は、結果として、正しかったのだ。
そして、何と言っても「夜空ノムコウ」をSMAPというアイドルグループが歌ったということも大きい。
「夜空ノムコウ」発売当時のメンバーの年齢は以下の通り。
- 中居正広・・・25歳
- 木村拓哉・・・25歳
- 稲垣吾郎・・・24歳
- 草彅剛 ・・・23歳
- 香取慎吾・・・20歳
香取慎吾が20歳で「夜空ノムコウ」を歌ってたってのがかなり驚き….
大学卒業などを考慮すると、ほとんどの人が22歳あたりで、社会に踏み出す。
つまり、当時のメンバーの年齢は、青春に別れを告げて社会を知る時期でもあったのだ。
このことが、「夜空ノムコウ」に多くの人々が共感できる要因になったのだと私は思う。
最後までご覧いただきありがとうございました。